今シーズン、NHKで放送している朝の連続ドラマ「エール」は、高校生にも分り易い内容で、また、舞台が福島であることからも、“毎日見ています!”と言う声が多く聞かれます。在宅期間ということもあり、家族揃って、朝食と共にご覧になっているご家庭も多いのではないでしょうか。
この「エール」は、何の取柄もなかった少年がある日音楽に目覚め、独学で作曲を学んだ後に、日本を代表する作曲家として活躍していく姿を軸に描いたものです。ドラマでは、窪田正孝さんの演じる“古山裕一”として物語を紡いでいますが、実は、実在した福島県出身の作曲家、古関裕而がモデルとなっています。
古関裕而の作品として最も有名なのは、全国高等学校野球選手権大会の大会歌「栄冠は君に輝く」でしょう。甲子園球場に響く「♪ああ~栄冠は~君に輝く~」という高らかな歌声を、皆さんも聴いたことがあるのではないでしょうか。他にも、阪神タイガースの球団歌「六甲おろし」や、読売ジャイアンツの球団歌「巨人軍の歌(闘魂こめて)」、NHKスポーツ中継のテーマ曲「スポーツショー行進曲」など、数多くの応援歌、行進曲を作曲しています。
そんな古関裕而も、戦前はキリスト教の音楽から多くのインスピレーションを受けて、クラシック作品を多く作曲していました。それもそのはず、独学で音楽を学び、その後より専門的な学びを得ようと門戸を叩いたのが、仙台市内の教会だったのです。その教会で学んだ西洋の音楽が、彼の作曲技法の礎となり、後の日本の音楽界に大きな影響を与えることになります。
そして、その教会で古関裕而に作曲・和声の手ほどきをしたのが、作曲家:金須嘉乃進でした。金須嘉之進は敬虔なクリスチャンであり、聖歌の指揮者としても有名であったのですが、同時に作曲家としても活躍、かの大作曲家リムスキー・コルサコフ(ロシア1844~1908)に師事した唯一の日本人とも伝えられています。金須嘉之進は大作こそ遺すことはありませんでしたが、その生涯を音楽教育に捧げ、本校の前身「吉田高等女学校」で教壇に立つなどしていた縁もあり、“聖和学園短期大学校歌”そして私たち聖和学園高等学校の校歌を作曲、今でも歌い継がれています。
他にも、慶應義塾大学の旧塾歌や県内の学校の校歌など多数手掛けているのですが、朝ドラの主人公の師匠にあたる人物が、本校校歌を作曲していたという事実…これを知って朝を迎えると、ちょっと誇らしげな気分になりませんか?
(文責:三神峯キャンパス芸術科 千浦名生)